大悲閣千光寺は、嵐峡をはさんで小倉山の対岸の険しい山の中腹にある。渡月橋南側から嵐山のふもとの細道を川沿いに数百m上り下りすると、嵐峡館の手前に参詣路がある。入り口に案内板がある。曲がった急な坂道を100m前後登ると、大悲閣に到着する。
大悲閣は、当初は嵯峨中院にあったが、保津川改修に尽した角倉了以が、工事の際の関係者の菩提を弔うため、保津川を眼下に望むこの地に17世紀の初めに移築し、晩年はここに隠棲したものとされている。
狭い境内であるが、頻繁に人が訪れ、外国人の訪問者がかなり多いという。辺りは森林に覆われ、渓谷に突き出した本堂には開祖と了以が奉られている。部屋からは渓谷の谷底が見え、また前方には小倉山の鞍部の上に双が丘や比叡山が望まれる。時折鐘楼の鐘の音が谷間に響く。時間を忘れて自然と向かい合える別世界である。